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東京地方裁判所 平成12年(レ)143号 判決 2000年7月07日

控訴人(原告) 日本百貨通信販売株式会社

右代表者代表取締役 A

被控訴人(被告) Y

主文

一  原判決を取り消す。

二  控訴人と被控訴人の間で締結された昭和52年12月13日付け金銭消費貸借契約に基づき、控訴人は被控訴人に対し、残元金16万円及びこれに対する昭和54年9月4日から支払済みまで年1割8分の割合による金員の支払請求債権を有することを確認する。

三  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

主文同旨

第二認定事実

争いのない事実並びに<証拠省略>及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、昭和52年12月13日、被控訴人に対し、17万円を貸し付けた(弁済期昭和53年1月12日、利息月7分5厘、遅延損害金日歩30銭の約束)こと、昭和59年2月8日に東京簡易裁判所昭和58年(ハ)第6082号事件において、被控訴人は控訴人に対し、金16万円及びこれに対する昭和52年12月14日から昭和53年1月12日まで年1割8分の、昭和53年1月13日から支払済みまで年3割6分の割合による金員を支払えとの判決が言い渡され、その後この判決は確定した(以下、この確定した判決を「本件確定判決」という。)こと、平成3年7月24日、本件確定判決を債務名義として被控訴人の動産に対して強制執行が実施されて差押えがされ(以下「本件差押え」という。)、同年11月26日、本件差押えのされた動産について競り売りが実施されたことが認められ、被控訴人が東京簡易裁判所に対し、本件訴えである平成11年(ハ)第16840号債権存在確認請求の訴えを提起したのが平成11年12月7日であることは本件記録上明らかである。

第三当裁判所の判断

一  前記第二の認定事実の下では、控訴人が被控訴人に対して有する債権の消滅時効期間は、本件確定判決により10年となり(民法174条の2第1項)、本件差押えによって時効が中断し、その後強制執行の終了とともに再度時効期間が進行を始めたものの、10年の消滅時効期間が経過する前に本件訴えが提起されているから、未だ時効は完成しておらず、控訴人の被控訴人に対する昭和52年12月13日付け金銭消費貸借契約に基づく債権がなお現在していることは明らかである(なお、当審において本件確認請求に係る附帯請求の割合は全期間を通じて年1割8分に減縮された。)。

二  もっとも、被控訴人は、平成3年7月24日の強制執行の際、控訴人の代理人Bが被控訴人に対し、残債務を免除する旨の意思表示をしたと主張するが、本件証拠によっても控訴人の代理人Bが被控訴人に対し残債務を免除する旨の意思表示をしたことは認められない。

三  なお、原判決は、債務名義に基づく強制執行後5年を経過したことにより商法522条に定める消滅時効が完成した旨判示する。

しかし、民法174条の2第1項は、「其時効期間ハ之ヲ十年トス」と規定しており、一旦時効中断された後の時効期間について10年と解するのが相当である。

四  以上のとおりであるから、民訴法305条により、右判断と異なる原判決を取り消したうえ、控訴人の本訴請求を認容することとし、訴訟費用の負担について民訴法67条2項、61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 成田喜達 裁判官 髙宮健二 阿閉正則)

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